寝直すと言ってウソップが部屋に戻ってから、もう一度泣いた。
これで終わりだ。
「なんで、おまえなんだ。」
刻みこめ、あの言葉を。
もう二度と間違えるな。
幸い、あいつは忘れている。
あの様子なら、何をしたかもあやふやだろう。
あとはおれがしらばっくれれば無かったことになる。
簡単じゃねぇか。
ノリのきいたシャツに身を包むとあちこちが擦れて痛い。
柔らかいネルシャツに腕を通し直し、ゆったりとしたカーゴパンツを履く。
これなら動きの鈍さがカバーされる。
キッチンに戻ると、先ほどと寸分たがわぬ姿で寝ている男。
ちらりと一瞥し、床に散った血痕と残滓を拭き清め、染みのついた毛布を始末する。
夕べの痕跡が一点を除いて残っていないことを確認し、
最後の一点、ゾロの下腹部に温かい濡れタオルを乗せ、踏む振りをして乱暴に拭う。
「起きやがれ!クソ剣士!レディのお目覚め前にその汚ねぇモンをしまえ!!」
「いってぇー!何しやがる!アホコック!え、あれ?」
「なんだ、カビ頭。」
「てめぇ、戻ったのか。」
「はぁ?人語をしゃべれマリモマン。」
「一緒に寝てたよな。」
「なんで、てめぇと寝なきゃいけねーんだ。おれの添い寝はナミさん限定だ。
頭ん中まで黴びやがったか?
どうでもいいから、サッサと服着て、出て行きやがれ。
目障りだ。
てめぇが視界に入ると爽やかモーニングプレートがブロッコリーだらけになりそうだ。」
もう一枚の濡れタオルを投げつけながらシッシッと手を振る。
「朝っぱらからうるせーな!
おれが居るくれぇで失敗すんのは、てめぇの腕が悪ぃんだろうがよ!」
言い返しながらもキッチンから出て行く男を睨みつけ、
ドアが完全に閉まると膝から力が抜けた。
「ははっ。きっちぃな~、こりゃ。」
おれは床にへたり込み、頭を抱えた。
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