何かの始まり A-2

チキショー せっかくキッチンに居たのに、水を飲み損ねた。

あぁ、昨日は完全に飲み過ぎた。

まだ胸がムカムカする。

酔っ払って裸になるなんて、とんだ醜態だ。

起こし方に問題はあるが、コックに感謝だな。

ナミに見られたら、汚ねぇもん見せたとか言って、また金取られるとこだ。

 

あいつの寄越した濡れタオルもほかほかして、汗ばんだ肌に気持ち良い。

しかし、変な夢を見たもんだ。

白い肩、白い脚に伝う白い液体。

薄暗い中、ふんわりと微笑んだコックはとてつもなく綺麗で・・・ブンブンと頭を振る。

 

ありえねー。

 

そもそも おれに笑いかけること自体無ぇだろう。

いつだって、憎々しい顔しか見せねーじゃないか。

さっきまで他のヤツらと笑ってても、おれの方に振り向いた途端、ムカつく顔をしやがるんだ。

そんなことを考えながらの二度寝だったからか、またあの夢を見た。

いや、もっとひどい。

 

おれは全裸のコックを舐め回していた。

少ししょっぱい汗の味がとてつもなく美味く感じて、夢中で愛撫する。

その度に白い肢体がびくびくといやらしくくねって、長い腕がおれに縋りつく。

『コック』

おれが囁くと、涙を湛えた碧い瞳がぼんやりと開いておれをとらえる。

『ゾロ、ゾロ・・・』

感極まった声でおれを呼ぶ。

 

チクショー。

寝らんねー。

とんだ安眠妨害だ。

 

continue