何かの始まり A-3

「なーに やってんの、あんた。」

 

キッチンから飛んでくるお玉、トング、空き瓶、小樽等々に追われるように甲板に走り出すと、ナミが呆れた声で聞いてきた。

 

「あのヤロー、手当たり次第投げつけやがって、ヒステリーかってんだ。」

 

「どうせ、あんたが余計なこと言ったんでしょ。」

 

・・・夕べ てめぇとセックスしなかったか?と聞いたらこうなった、とは言いにくい。

ムゥッと黙っていると肩をすくめるが立ち去る気は無いらしい。

 

「何でも良いわ。片づけときなさいよ。」

 

「なんで、おれが!」

 

「あんたがサンジくんを怒らせたんでしょ!!」

おれが悪いと決めてかかった言い方が気に障るが、今回は反論できない。

 

「サンジさぁ、具合悪そうだし、ちょっといたわってやれよ。

 昨日だって急な宴会だったしよ~。

 なのに、朝メシの支度のために今朝も相当早い時間に起きてくれてんだぜ。」

 

ウソップが拾うのを手伝いながら話に加わってきたと思ったら、おれの味方じゃなかった。

耳の痛い話だが、知っているから黙って頷く。

さっきだって、キッチンに行ったら、鍋を火にかけてんのに、珍しく腰かけてた。

 

「あ、そうそう、今夜の不寝番あんたよね。

 敵襲とか無い限り、船進ませるから、寝ちゃダメよ?今の内に昼寝しときなさい。

 明日島につけるかどうか、あんたにかかってるからね、ちゃーんと針路見ててよ。」

 

「おれ、代わろうか~?」

 

ナミのクドい物言いにウソップが口を挟む。

 

「大丈夫だ。」

 

「そうね、サンジくんに寝る前に確認するよう頼んどくから、大丈夫でしょ!」

 

「おれだけで大丈夫だっつってんだ!で、なんでそんなに急ぐ必要があるんだ?」

昨日宴会した位ぇなんだから、備蓄はあるんだろうに。

 

「おいおい、ゾロ~昨日の宴会は何でだか覚えてるか?」

 

「あ?閏年だから、とかなんとかルフィのこじつけだろう?」

 

「そう、閏日だ。ってことは今日は3月1日だ。わかるな?」

 

バカにした言い方がムカつく。

 

「じゃ、明日は何の日?わかったら、さっさとサンジくんと仲直りしなさいよ!」

まるで答えを言ったかのようにナミが喋り、居なくなった。

 

何のことだか見当もつかないおれに、ウソップがため息をつく。

「サンジの誕生日だろ。おめぇほどじゃ無ぇけどよ、サンジの誕生日も相当わかりやすいぜ?

 覚えとけよな~。ちなみに来月の今日はおれ様だ!」

「ふーん」

「ま、ホントにさ、誕生日くらいケンカしないでいろよな。

 あれも、おめぇだろ?サンジの腰にさ、でっけぇ痣できてたぜ?」 

「腰?」

「おぅ。さっき、サンジが上のモン取ろうとしててよ。服が上がって青黒い横っ腹が見えんだもん。

 驚いたぜ。ぶつけたとか言ってたけどよ、くっきり手の形だったぜ。

 おめぇにやられたってバレたくねぇんだろうから黙っといたけどよ。

 ありゃ、チョッパーにも見せてねぇな。」

「コックんとこに行ってくる。」

「お?おう!それがいいぜ!」

 

キッチンへと足を向ける。

腰に手の痕だと?そんなケンカはしてねぇぞ。

夢の記憶の通りじゃねぇか。

 

挿入の痛みから、上へとずり上がるあいつの腰骨を両脇から掴んでおれは腰を振っていた。

逃げるのを諦めたコックは敷いていたシーツを掴む。

どれだけ力が入っているのか、その手に浮かび上がった筋。指先まで血の気がなく震えていた。

その手を掴み、口づけると感嘆の声を上げ、おれの首に両腕を絡めてきた。

そのまま、しがみ付かせて注挿を繰り返していると、明らかにヨクなっていってるのが、

手に取るようにわかった。

ホッとした思いと同時に、初めてじゃないのか、とガッカリしている自分がいる。

それどころか相当慣れてるんじゃないか、と浮かんだ疑問を口にした。

 

 

こんなに鮮明に覚えている。ひとつ思い出せば、連なった記憶はその先を連れてくる。

夢じゃないだろう。

あいつ、何で隠しやがった!

 

 

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