素直になれなくて

穏やかな昼下がり、前甲板にパラソルをだし、優雅なティータイムを楽しむナミとロビンの脇をゴム腕が伸び縮みしている。

「レディ方、お代わりはいかが?」

「ゴムゴムのバンジー!!!」

「うるせーなー。場所変えるかい?」

「大丈夫よ、コックさん。お代わりいただける?」

「ぃよろこんで~♪」

「ねぇ、サンジくん。今日のご飯なぁに?」

他の男性陣には、こき使われているとしか思われてなくても、サンジの至福の時だ。

その甘やかなときは突然の衝撃が中断した。

 

ドガッ!ザバーーン!!!

 

「わりぃ、わりぃ!サンジ!!」

 

甲板から吹っ飛ばした張本人が平然と、共犯者二人が恐る恐るとヘリから海を覗く。

「上がってこねーぞ。」

「ゾロー!サンジが溺れた~!」

 

「はぁ?コックなら平気だろ?」

「結構経ってるのよ、見てきて!」

ナミに突き飛ばされたゾロは海の中で沈んでいく金髪を捉えた。

引き摺り上げたサンジは、気は失ってはいるものの穏やかな呼吸をしている。

「水も飲んでないみたいだ。大丈夫。すぐ目を覚ますよ!」

チョッパーの診断に胸をなで下ろす。

 

「ねぇ、サンジくん。ちっちゃくない?」

「服が濡れて張り付いてっからじゃねーか?」

ゾロがボタンを外し、腕から袖を抜いて抱え上げたとき、パチとサンジの眼が開いた。

 

「うわ!オッサン何しくさる!ヘンタイ!!」

「てめぇ、助けてやった礼がそれか!?」

一色触発、そのとき、チョッパーがサンジのむき出しの背中を撫でた。

「うひゃっ!」

「サンジ。ドクトリーヌの縫い跡が無いよ!」

 

―――――

どよめく一同が問いただしたところ、サンジは17歳だという。

さぞ、困惑するかと思いきや、記憶の根底はあるようで「バラティエは・・・いや、そうか、海賊になったんだよな・・・」等としばらくブツブツとつぶやいた後、

「とにかく、おれはてめぇらの腹を満たしてやりゃいいんだろ?」ニカッと笑った。

 

チョッパーが採血をし、医学書と首っ引きになっているが、戻る様子はなく、日は暮れた。

「うぉー!未来のおれ、すげー!クソうめぇ!!マジかよ、天才じゃねぇか!」

一騒ぎしながら出来上がった夕食はちゃんと美味しいものだった。

 

「おい、コック。」

「なんだ。ヘンタイ。」

身構え後ずさりながら答えるサンジに苛立ちが募る。

「酒」

「そこにある。勝手に選べ。下二段は」

「料理用だから手を出すな、だろ。」

「お、おぉ!そうだ!」

半端な記憶のくせに、いつものセリフを吐くのが憎たらしい。

「ちっ」

久し振りにツマミも供されない晩酌。

「美味くねぇ」

 

 

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