「チョッパー寝たか?」
ラウンジに設えられた簡易ベッドで横になっている男が開いたドアに向かって嬉々と尋ねる。
「ああ。夕べは一睡もしてなかったからな。横にした途端いびきかいてた。」
「悪いことしちまったなぁ~
ま、それはそれとして。おい。出せよ、あんだろ?」
「何がだ。起き上がるな。病人は寝とけ。」
ばふっと布団に倒し、知らんぷりする剣士。
「わかってんだろ?匂いしてんだよ。」
再度起き上がり、腹巻に手を突っ込む。
「てめ、やめろ!くすぐってぇ!」
「お?感じちゃった?」
再びばふっと沈められる、まだ高熱の男。普段白い顔が赤く上気している。
「なぁ~頼むよ~、ちょうだい♪ た・ま・こ・ちゃ~ん」
「なぁにがたまこちゃんだ、別モンになってっだろが。」
「ヤーニー!ヤーニッ!」
「うるせーなー。病気ン時くれぇおとなしくできねぇのか、てめぇはよぉ。」
先ほどまでぐったりと、頭も上がらなかった男の変わりように苦笑する。
「昨日よかずっと楽だぜ、むしろふわふわして気持ちいい。」
「それがおかしいんじゃねぇか?」
「そか?熱なんて初体験だからわかんねぇ。」
「ま、おれもわかんねぇけどよ。」
人外同士の会話は平行線に進む。
会話しつつも、腹巻に手を伸ばすが、腹を探られてはいくら気を抜いてても気付かないはずもなく。
「だーかーらー!」
「あー!もう!ちっとで良いから!煙吸わなきゃ、イライラして寝らんねぇよ。」
コックの逆切れに敵う剣士はいない。
タバコとマッチを腹巻から取り出し、タバコを一本抜き取る。
「はぁぁぁっ、ゾロ♪」
初めてハートがとんだ状態で名前を呼ばれたゾロは、スッとそれを口に咥える。
「うぁぁぁぁっ、てんめぇ!」
ハートは打消し、怒号を飛ばしたものの、意外に様になる火をつける姿に一瞬見惚れる。
肺いっぱいに煙をため込んだゾロの唇が降りてくる。
思わずうっとりと、煙と咥内を貪った果てに、手を突っ張り、ゾロを遠ざけようとした。
「ん、は・・ダメだ。うつる・・・」
「移んねーよ。感染期間終わったからってチョッパーが見張り交代に応じたんだ。」
「見張りかよ。てめぇじゃあるめぇし。看病って言えよな。」
「見張りだろ。誰も居なかったら喫いまくってんだろが。」
否とも応とも答えずに、にやんと笑い、窄めた口をとんとんと指先で叩くと
仕方ねぇなぁ、と剣士は慣れぬタバコを咥え、一本だけだぞ、とコックの望むものを与えるのだった。
後日
「なんで一本普通にくんなかったんだよ、てめぇがチューしたかったんだろ。」
「違ぇよ、間に挟んだ方がまだ体に良い気がするだろ?」
いっぱいに吸い込んだ煙を緑の頭めがけて吐き出す。
「ぶわ~か。副流煙の方が体に悪いんです~」
「げほっ、てんめぇ!」
「肺がんだろうが、アル中だろうが、てめぇの方が早死になのは確実だな!」
「おりゃ、一応戦闘員なんだがよ・・・」
「てめっ、ばーか!ばーか!!てめぇが戦いで死ぬわけないだろうがっ!!!」
fin
ゾロって二人きりだと、意外と甘やかすタイプじゃないか、と。
で、サンジくんは、心底 ゾロ最強と信じてるといい、と。
でも、こんな面と向かって言うのはどうかなぁ。もっとツン率高いか。ツン×50デレ×1位か。どんなんだ。