ホントに気に食わねェヤツだ。
出会ったときから、水の合わないヤツだと思ったんだ。
おれと同い年のくせして、高級レストランの副料理長なんて地位とそれに見合う実力を持っている。
なのに、それを捨てて、夢を追って旅立つなんて、元々身一つのおれにゃ、マネもできねぇ。
恩人の夢だからって店守って、自分の夢のためにって修行し続けてたんだろ。
カッコつけすぎじゃねぇか。
おれとほぼ同じ背丈なのに、おれよりずい分腰の位置が高い。
おれだってファーイーストじゃ、普通だったんだ。短足じゃねぇ!
おれより一回りも二回りも小さく感じる薄い身体。
そう、薄いとしか言いようがないんだ。
足はもちろん、腕だって相当力があることも知ってっけど、
その力がどっから出てんのか不思議な、細ぇ首、薄い肩、ほっそりと長い手脚。
指先まで細ぇから、手もちっちぇのかと思ったら、意外とでかいことに最近気付いた。
それに、関節はごつごつしてるし、傷だらけだ。
おれが真剣握るずっと前から、包丁握ってた鍛えられた手なんだよな。ムカつく。
それにあのきんきら頭。
別に金髪自体は珍しくねェけど、普通もっと赤っぽかったり白っぽかったりしねぇか?
おれの短い髪ですら軋む海上生活を、おれよりずっと長いことしているはずなのに
サラサラと音を立てる綺麗な髪。
女でもあんなの見たことねェよ、ってあいつ程女知らないけどな。
肌も白い。なんで日焼けしねぇえんだ?
思わず撫でたくなっちまう。
ありえねぇだろ!
こいつにおれみたいな傷がついたら、おれでさえ目を背けるかもしれない。
大きな白目の中で、くりくりと動く青い、海を映した瞳。
その上にうずまく眉毛、ありゃなんだ?
明らかに変なのに、金色の渦巻きが髪に隠れると物足りない。
そんな見かけに、あの中身入れたのは誰だ!って怒鳴りたくなる凶悪さ。
口も、目付きも、足癖も、最悪以外の何もんでもない。
気は短ぇし、仕種はキザだし、女と見りゃデレデレと。
おれには、ロクな顔を向けないのに、他のヤツらにゃケラケラ笑いやがる。
それを見たさに昼寝のフリして薄目を開けちまう。
一緒に戦うと、示し合わせなくても動きたいように動ける居心地の良さ。
今まで一人で戦ってきたオレが、こいつになら戦闘中でも安心して背中を預けられる。
イキが合うってのはこういうことか、と気づかされる。
なのに、ちっとおれが怪我すると、戦闘中でもよそ見しやがる。アホが!
何から何まで気に食わねェヤツだ。
fin