昔の話をしよう

キッチンで座って食費の集計をしているサンジの元へ、チョッパーが走り込んできた。首には風呂敷を巻いている。

「サンジー!水くれ!」

「おう、チョッパー。かっこいいな、チョッパーマンか。」

「うん!ヒーローはマントするんだろ?」

「んー、定番だな。おれがちっこい時に好きだったヒーローはしてなかったけどな。」

「そうなのか?どんなカッコなんだ?」

 

冷蔵庫からレモン水を取出し、グラスに注ぎ入れながら答える。

「全身銀色で赤いラインが入ってるんだ。」

チョッパーが怪訝な顔をする。

「顔は?」

「顔も同じ色で、眼が光ってて・・・くはは!わかんねーよな。」

苦虫を噛み潰したようなチョッパーの顔を見やり、サンジが笑い出す。

 

テーブルに散らばったレシートをひっくり返すと、サラサラとヴルトラマンらしき絵を書きつける。

「こうな、普通の人間が3分だけ銀色の宇宙人に変身すんだよ。

 で、時間切れ間近になると、こう、胸のタイマーがピコピコすんだよな。」

全身銀色に赤い縞々というお化けのような想像をしていたチョッパーの目がキラキラと輝く。

「カッコいいな!ピコピコすっとどーなんだ!?」

ガチャ、とドアが開きゾロが入って来、サンジは時計を見て立ち上がる。

喋りながら、冷蔵庫からゾロのドリンクを用意する。

「慌てて怪獣やっつけて帰るんだよ。」

「何の話だ?」

「ほら!サンジのヒーローだ!」

「ぎゃー!」

サンジが止める間もなく、チョッパーがニコニコとレシート裏の落書きを見せる。

 

「何だ、こりゃ。」

「クソうるせー!見んな。」

サンジの手が追うが、ゾロはひらひらと逃げつつ、鉛筆を持つ。

「ちげーよ。このツノ、タローだろ?だったら、目はこうだろ。」

サンジの書いたひし形の目をグリグリと長丸に塗りつぶす。

「あ。」

「な?」

サンジが鉛筆を奪い返し、もう一枚のレシートの裏に、もう一体のヴルトラマンを書く。目は先ほどのひし形、ツノは真ん中の一本だけだ。

「おー!それそれ。」

ゾロが手元を覗き込み、にやりと笑う。「セフンだな。」

 

チョッパーが我も我もと覗き込む。

「これもカッコいいな!すげーな、ゾロも知ってんのか。」

「そうだな。おれらの年代のイーストのヤツはみんな知ってんじゃねぇのか。

 バラティエみてぇな海の真ん中でも映るとは思わなかったがな。」

「陸に近づいたときだけな、映るんだよ。

 でもな、ホンモノっつーか来たことあんだぜ。」

「おお!すげーな。」

「なんか、営業の一環だったんだろうな、バラティエの名前も出始めた頃で、ショーやらせろって来たんだよ。」

当時を思い出すように、口角が上がる。

「おれ、嬉しくてよー、控室にメシ運ぼうとしたらクソジジイに邪魔されて、パティが持ってっちまって、恨んだなぁ。」

ゾロがふふんと笑う横で、チョッパーが憤る。

「ひでぇ!サンジ子どもだったんだろ?なんで大人が取っちゃうんだよ!」

サンジとゾロが互いを見やりニヤリと笑う。

「だよなー、ひでーよなー。」

憤慨するチョッパーを宥めるフリして乗っかるサンジ。

バラティエで大人ぶっていた小さいサンジが着ぐるみだと知らずにワクワクしている姿を想像してもおかしいし、

むさいおっさん達が夢を壊さないように必死になっている姿もおかしい。

しかも、その本人は、嬉々としてチョッパーをだましている。

余計なことを言ったら、後でサンジに何を言われるかわかったもんじゃない。黙っとけ、と思うとそれすらおかしく思えてくる。肩を震わせながら、ゾロは手元の落書きを増やす。

「もし、この船に来るときは、おめぇに給仕役を任命するからなー。」

ゾロが堪らず噴き出した。

 

サンジもつられて笑い出し、聞きつけたルフィとウソップが入ってくる。

「なんだ、なんだー?」

「楽しそうじゃないか、おれ様も混ぜろ~!」

テーブルで書き散らされた落書きを見つけた。

「あ!これ知ってるぞ。ハルタン星人だな。」

「一番強いヤツだろ!」

「ちげーよ。一番強いのはセットンだろ。唯一ヴルトラマン倒した怪獣だ。」

毎週欠かさず見ていた上に、年長のゾロの記憶は確かだった。

「おれはモチロンが好きだったなー。」

「餅つきすんだよな、てめぇはそうだろうよ。」

 

「おれはカネコンかなー。」

「あ、それは知ってる。ベリーが大好きで人のまで奪っちまうんだよな。」

怪獣まではあまり覚えていないサンジが、数少ない知ってる怪獣の話題に嬉々と加わる。

「そうそう!で、金が食えないと暴れんだよな!」

興味深く聞いていたチョッパーがそこまで聞いてふと感想を漏らす。

「ナミみてぇだな!」

カネコンの姿を知らないからこそ言った悪意の無い一言だったが、姿が浮かんでしまった一同は大笑いとなった。

 

スゥーッと音もなくドアが開いた。

そちらを向いていたサンジがいち早く気づき、咳払いをする。

それに気付いたゾロが笑いをひっこめ、隣のウソップを肘でつつく。

 

「いっでぇーー!」

 

最後まで気付かなかったルフィのこめかみにナミのウメボシがさく裂した。

 

「楽しそうね、ルフィ?」

 

もちろん、途中で笑いを堪えた3人もゲンコツをくらうのだった・・・

 

fin 


くだらない話でごめんなさい。

そして、ナミさんオチにしか使えなくて、ごめんなさい。

今我が家では映画のゼットンは強いのかって話題で持ち切りなんです。

今までゼットン出るたんびに、強弱強弱の繰り返しで、順番的には今回弱い番なんだけど

映画なのに弱いと話になんないよね、と。

いや、映画行く気は無いんだけどね。ほんと、おばかな家族です。