New Year Panic

サンジはポケットに両手を突っ込み、浮かれた気分で船に向かった。

市場での会話を反芻する。

『へえ、お兄ちゃん今日着いたのかい? そりゃ、ラッキーだったねぇ。この島は三日でログが溜まるけど、正月の間は市場は休みだ。その代わり、大晦日の今日はどの店も大盤振舞いで大安売りだよ!』

『へえ! そりゃ助かるや。最近ろくに補給できなかったから、うちの船の食料庫は空っぽなんだよ。正月休みはいつまでだい?』

『おう、七日までだ。それまで居るようなら広場で七草粥の振る舞いがあるから、またおいで。』

『仲間に相談してみるよ。ありがとさん。』

ファーイーストと似た習慣の島なのだな、と気づいてほくそえむ。

確かにどの店も大盤振舞いだった。夕方の市場では大して買えないと思っていたのに、予想を裏切る大収穫!

行く先々で、「おまけしとくよ。」「ついでだ、これも持って行きな。」と大量の食材を積まれ、最後には配達してやる、と手ぶらで帰された。

今日明日は祭事で海軍も休みだという情報も得た。

そうなれば、さっさと隠している船を港に移し、配達に備えるだけ。

 

下見のつもりだった予算で、充分な食材を得たサンジはスキップしそうな軽い足取りで道を辿った。

ナミは帰っているだろうか。町までは一緒に来たが、祭りの詳細を聞いてくると行動を別にしたのだ。

「ナミさんなら心配ないか、聡明なナ~ミすわんに限って~♪」

 

チリン

 

足元を見下ろす。少し大ぶりな金色の鈴を蹴ってしまったらしい。

身を屈め、それを掴み上げる。

大きめではあるが、何の変哲も無い鈴。

握ると完全に手の中に隠れるプラム程の大きさ。そのサイズに見合わず、振るとチリンと可愛らしい音を立てる。

 

「どうすっかな。」

落し主が分かるようにどこかに置いておくか、と周囲を見回したとき、手の中の鈴がフッと消えた。

「えっ!?」

頭の上がムズムズする。爪先が、尻が、突然、全身がむず痒くなり、鈴の行方どころではなくなった。

走り出すといつも以上に足が軽い。一目散にサニー号へ駆け寄り、甲板に飛び乗った。

 

 

「……だから! いろんなものが落ちてるけど、触れる前によく見て!

一番狙いは今年の干支、馬よ!

馬に変化すれば最強福男、福女よ! ダメでも十二支なら福レースには参加できるわ!」

クルリとナミが振り向いた。

「あ、おかえり。サン…ってなんで早々にそんな姿になってるの~~~!」

 

そんな姿と言われて、すかさず自分を見下ろすが、特に変わったところは無い。

そういえば痒みも治まっている。

朝から着ている黒いスーツ、今日のネクタイは濃い青、シャツはピンストライプの入った水色。

ウエストがきついけど、と思ってベルトに手を伸ばす。その掌に……肉球……

「はああ!?」

神妙にナミさんのお言葉を聞いていたルフィ達に取り囲まれ、頭の上に生えた耳、鼻の横からピンと生えた髭、ズボンの中から引っ張り出された尻尾を自覚する。

鏡を見るまでもない。だって、感触があるんだ。

はああああーとナミさんの切ない溜め息が耳を打つ。

「猫はハズレよ。サンジくん。あぁ、もう~!  ガッカリ!」

しゅんと項垂れるおれの頭上では耳がヘニャンと倒れたらしい、それをロビンちゃんがヨシヨシと撫でてくれる。

「いいじゃない。どうせ船番も必要なんだから。」

 

 

 

「いーい!? あんた達! とにかく馬よ! 馬に関連するシルシを見つけたらすぐ変化! 他の干支ならとりあえずキープして時間切れ間際まで直接触れないようにね!

馬になればレースに参加しなくても賞品が貰えるわ! 特に神社に辿りつけないゾロ! あんたは馬になるしかないのよ!」

 

ナミの叱咤を受けながら、全員がぞろぞろと町に向かうのを船縁から見送る。

あーぁ、寂しいなぁ。

シルシは0時までに見つけないと変化できないらしい。

届いた食材で大至急拵えた夕飯を猛スピードで食べた一向は、これから0時まで宝探しになるのだろう。馬になれなかったら0時にスタートする福レースで疾走することになるし、戻りは良くて夜中。

新鮮な食材をしこたま仕入れたのに、あんな慌ただしい夕飯。

美味い酒もみつけたのに。

小さくなっていく仲間の頭。遠すぎて、もうアフロとリーゼントしか見えない。

そう思った矢先に大きくなってくるマリモ頭。

ぐんぐん近付いてくる。

 

「な、なにやってんだよ! ナミさんのお言葉を聞いてだろうが。戻ってきてんじゃねえよ!」

「バカバカしい! 撒いてやった。」

からからと笑う男を追い出す気にはなれなかった。

 

 

 

 

ゴロゴロとヒトにはあり得ない音が喉から鳴る。

顎下を擽りながら、ゾロがクツクツと笑う。

「蕩けきった顔しやがって。」

「あ……んっ、くふぅ……」

本来の耳に舌を差し入れながら頭上の耳を撫でられ、痛いほど股間が張りつめる。

毛を逆撫でるように背骨を這い上がってくるゾクゾクとした感触が全身に広がる。

震える手でボタンを外そうとするが、うまくいかず焦れったくて引きちぎった。

「なに、焦ってやがる。」

「てめぇこそ、なに勿体ぶって、やがる!」

ゾロの前をはだけ、現れた袈裟懸けの傷に舌を這わすとビクリと身をひく。

なんだ、こいつだって感じてるじゃねえか。

「てめえ、舌ザラザラ。」

あーんと口を開けさせられ、牙まであると笑われる。

そうか、と唇を捲るように口を開け、カプリと肩に噛みついてやると、ポツポツと2つの穴が開いた。

「こら! いい覚悟してんな。」

首の後ろを摘まんで引き剥がしたゾロは、よっぽど獣みたいな顔でニヤと口角を上げた。

 

 

髪の毛までぐっしょり濡れるほど耳を嬲られて、期待に満ちた秘庭は皺のひとつひとつまで伸ばすように弄られる。

もう来いと言いたくて、後ろ手にゾロを探し、ポンと叩いたつもりが爪が立ってたらしく「いて」と声がした。

悪かったな、とチラリと思うが、「ざまーみろ」と笑ってやった。

「早くよこさねーからだ。クソマリモ。」

「今日は素直だな。」

仰向けに返され、両脚を持ち上げていくおまえに向かって虚勢を張ったって仕方ないだろ。耳も尻尾もソワソワ動いてるし、あそこがひくついてるの位わかる。

 

挿入ってくる雄が、待ち焦がれたソレが、全身に歓喜の渦を巻き起こす。

「ああ!ああ、あ、ああああ!」

バカみたいに開けたままの口からひっきりなしにあられもない叫びが飛び出し続ける。

肩に回した手に力が入り、さっきの爪を思い出して、慌てて拳を握った。

「いいぞ。爪立てて。別に構わん。」

 おまえの背中に? おれの方が構うわ。

「い…い。…いらね…」

プイと横を向き、降ろした両手を握られる。

指と指の間にゾロの指が入り込む。ガッチリした恋人結び。

「うわ、ちょ……やめ、これ。恥ずい……」

へえ、と眉を上げたゾロが腰の動きを変えた。掻き回すようにグラインドされて息が詰まる。

「はあっ! ア、あン―――!」

「よっぽどやらしいとこ繋がってるんだがな。こっちは平気で、手の方が恥ずかしいのかよ?」

 ああ、もう、そんなこと知らねえよ!

 

 

最中に尻尾の付け根を撫でられると力が抜けた。それに気づいたゾロにしつこい程弄られた尻尾が、終わったあとも痙攣している。

 

喘ぎすぎて、ヒューヒュー鳴る喉をさすっていると、ゾロが飲み物を取りに立った。今日買ってきたばかりの純米酒、わかるところに置いたっけ?

「こりゃ、なんだ?」

質問と同時に差し出された水を嚥下し、木箱の下、酒瓶に紛れて転がっているU字型の金属を見る。

「なんだ? 馬蹄?」

「「あ!」」

ゾロが摘まんだソレが姿を消す。

頭の上ににょっきりと耳が伸び、裸の背中に鬣が生えた。その延長線上にふわりとした長い尻尾。

「あ、あは……やったな。探しもしねえで福男になっちまいやがった!」

「これで、どうすんだ?」

「朝日が出たらお迎えが来るらしいぜ。ご来光浴びたら場所がわかるんだと。」

「ふーん。じゃ、タイムリミットは日の出までか。」

なんの?そう口に出す前に指し示されたソコは、いつも以上の凶器と化していた。

 

「まて! 待てまて、無理! なんだ、それ!」

「まあ、馬だから。仕方ねえよな。」

『馬並』あれって、ホントなんだ…目眩を感じながらも、ちょっと湧き出る好奇心。

「一回だけ、な。無理だったら、諦めろよ?」

言い含めながら熱を持つ身体。

 

ポーンと能天気な時計の音が響き、舌を絡ませながら交わした新年の挨拶は今年がどんなものになるか予感させるに充分で。

 そういや、元旦は禊の日なんだっけ?なんて、益々居た堪れなくなるような知識が頭をよぎった。

 

fin


WiiのマリオのCMで、猫化がかわいい!おっさんのくせにかわいい!

これは、可愛いサンジがやったら激かわいいに違いない!ということでやりたくなりました。

更に年末のツイッターやLINEで、午年、うま、馬、馬並……ゾロ!?とか

二年参りはサンジの中で、なんて言ったら『元日は禊の日ですよ』と窘められました。

なので、全部つっこみました(おい)

 

これ、実は数人に年賀状代わりに送りつけました。

そしたら、こんな素敵なイラストを下さった方がいます。かわいいでしょ!

 

森さん、ふじさん、本当にありがとうございます!