0721の日

それは深夜の見張り台。

すべての雑事を片付けたサンジが、ゾロがトレーニングをしているであろうそこへ言い訳の酒を片手に登ったが無人だった。

「便所か?」

チッと舌を鳴らし、煙草に火をつける。

一本が灰になっても、ゾロが戻る気配はない。

元々気の長い男ではない上に、予定していた思惑が思惑だけにイライラは募る。


チーっとジッパーを下げると、ムスコはすでに半勃ちで、その期待に応えない恋人の不在がまた腹立たしい。

「一人ですんのも久しぶりだな……」

ペロリと口の端を舐めて、竿を握る。

輪にした指を数回上下して、親指の腹で先端を撫でるとたちまちそこは直立する。

徐々に息は荒くなり、溢れた先走りで掌が濡れた。

動きやすくなった手が益々はげしく擦ったため、透明な液体は竿全体に塗り広げられる。

「はっ……気持ちイ…」

たしかに気持ちは良いのだが、物足りなくて、払拭しようと意図的に声に出したのだが…。

結果は惨敗。

物足りない、そこじゃない、と自覚するだけだった。

「くそ…」

試しに蟻の戸渡りを通り、指をそこに向けてみたら、物欲しげに開閉していて、サンジはギョッと手を引いた。

そこはまるで性器だった。

「くそ、うそだ、こんな……」

更に前を刺激してみるものの、無意識に目が酒瓶をとらえる。

中身入ってるし!と理性が抑えようとすれば、部屋の隅にまとめられてる空き瓶の山が頭をよぎる。


「絶対ぇ…前だけで……イってやる…!」

ほとんど意地だけで擦りたてる。

達するのが先か、赤剥けするのが先かのギリギリで生理現象が白星をあげた。

「あ、あぁー!クソゾロちんこの役立たず!腐れ果てちまえー!」

絶叫とともに白濁を飛ばして、サンジはどさりとソファーにもたれかかった。

疲れた。ひたすら疲れた。


「ご挨拶だな」

中央のはしごから、ドスのきいた声がかかる。

濡れた緑髪から滴がしたたり、裸の肩からは湯気が立ち上っている。

(遅ぇよ)

サンジはジロリと緑の頭を睨み付け、傍らの酒瓶を投げつけた。

「てめえが悪ぃ」

「あー?なんだってんだ。人の悪口でイってんじゃねえぞ、感じ悪ぃな」

飛んできた酒をグビッと飲んで、しどけなくソファーに凭れるサンジを眺めおろす。その視線から隠れるようにサンジは太腿までずり下げていたスラックスに手をかける。

「てめえのせいだ、くそ!てめえが悪い!」

「おれがいなかったからか?」

「それもそうだし、こんな、こんな…!」

サンジの内股に、力が入り、モゾッと足が擦りあわされる。

その無意識の動作がゾロの目を引きつけた。

パッとサンジの膝を掴むと、両脇に大きく開く。

「うわ!」

曝された秘密の場所はヒクリと蠢く。

「やめ!バカ!」

サンジの両手が隠そうとするのを尻目にゾロはニヤリと口角を上げた。

「なるほど」

サンジの頬がカァーッと赤く染まる。

「こりゃ、たしかにおれのせいだなぁ?」

「う…ぅ―――」

脚を閉じたサンジがゾロに背を向けたのは、尻をそちらに向けるためだったのだろうか。

白い双丘にゾロの手が這えば、サンジはもう期待を隠すことができなくなった。

「は…ぁ……」

潜り込んだ指が触れただけで、熱い祕所はクチュリとそれを迎え入れようと動く。

「触ってねえんだよな?もうトロトロじゃねえか」

サンジの眦が熱く火照る。

治まりかけていた呼吸が再び荒くなる。

「すぐ挿れていいか」

ゾロの言葉は、質問の形を取った確認でしかなく、サンジが頷いたのなど見たかどうかも怪しいものだった。

「責任、とれ……ばか」

凶悪なニヤリとした笑みを浮かべたゾロの表情と反して、その眼はひどく優しい色を帯びていた。


あとは、ただ…熱く二人溶けるだけ。

まだ仲間が起き出すまで、時間はたっぷりあるのだから。


fin