六花の光 附

こちらは、オフ本で発行いたしました、立花の光 上、下のおまけとなっております。

本をお持ちの方は、下巻のあとに読んでいただけると嬉しいです。

お持ちじゃない方も、エロ部分だけなので困らないと思いますが、前提としては、「新世界、海賊」「告白しあったことは無かったけど、付き合っている二人」「命を落としかけたサンジが戻った直後」とだけ踏まえていただければいいかなーと。

そんな感じでよろしければ、どうぞお読みください。


本誌はルビを振っていたため、サイトの仕様だと、漢字ひらがなと続いて表記されています。読みにくくて申し訳ありません。



「あぁ―――!」

 先にサンジが達すると、内部のゾロにはイイ刺激になるようで喜ぶが、イッた直後に抽挿されるのは実はちょっとキツイ。快感も過ぎると痛みに近いのだ。

 垂直に上げられた片脚を、ゾロが抱き締めるようにしながら腰を送り込んでくる。サンジの口からは母音が絶えず漏れ、飛びそうになる意識の中で、ゾロの言葉を反芻はんすうしていた。

 

愛していることなんて、愛されていることなんて、もうとっくに分かっていた。

 見聞色を身に着ける前でも、熱い視線に、触れる指先にそれは宿っていた。ゾロはどう思っているのかわかりにくい男で、何度もサンジは不安になったけれど、それでも信じられるだけの愛情が滲にじんでいた。

 

なのに、言葉の持つ威力の大きさに驚く。

――愛してる――この一言が胸に沁みる。

サンジの腹の中で、熱い液体が弾ける。

「あ、んぅ……あつぅ……」

 中出しする男なんて、よそで聞いたらサイテーだと思うのに、これが至福のときだなんて、困ったもんだ、と他人事のようにサンジは思った。

 じんわりと熱が広がって、力を失っても圧倒的な重量のあるゾロと自分の腸壁の間が濡れていく。そこまで感じてるわけは無いのに、まざまざとその様子が浮かんでしまう。

 なにも実らない身体に放たれたそれは、ゾロがサンジに欲情し、快感を得た証。本能が求める相手ではないからこそ、欲した理由が愛情だと物語る。

 サンジは、無意識に下腹を撫でた。その顔に浮かぶ優しい微笑みは、ことのほか美しかった。

 

 グチュリ

「っ……ん!」

 ゾロのほんの少しの身動みじろぎで、敏感になっている秘孔が絞まった。

「まだ、出ていくなってか?」

「んな、こと、無い…とっとと抜け、エロマリモ」

憎まれ口とは相反した表情を見て、ゾロは破顔した。

頬は朱に染まり、潤んだ瞳で自分の下肢を抱える男を睨むから、まるで流し目だ。苦しげに開いた口からは、艶っぽい吐息が零れている。

ゾロは、サンジが横臥おうがしている背中側に手をつき、横になると背中からサンジを抱き締めた。

「まだ居させろ…もう小っさくなったから平気だろ」

 中に居るまま動かれただけで、震えるほど感じたというのに、ゾロはそんなことを言う。

「良いけど……でけえよ、充分……」

「煽ってんのか?」

「違っ! 遠慮しろって――」

 パッとゾロを振り向いたサンジが、言い淀んで顔を伏せ、ゾロの目の前の白い耳朶がサァーっと赤くなる。

「なんで、おまえ…そんな甘ったるい顔してんの……?」

「そんな顔してるか?」

「してる! エロいっつうか……恥ずかしい」

「ひでえ言い様だな」

軽くいなして、ゾロは眼前の赤く染まった薄い耳朶をチロリと舐める。

「ん!」

 耳全体を甘噛みして、耳穴に舌をグリグリ入れると、腕の中の肢体がビクビク振動した。

「たしかに、甘やかしてえ気分ではあるな」

「甘やかすって、なん、だよ…」

「なんだろうな、てめえが可愛くって仕方ねえ」

 頬に舌を這わすと、なにか言いかけていたサンジの口からは嬌声が飛び出した。

アの形に開いたままになってしまった口にゾロが二本の指を揃えて突っ込むと、愛しげに舐めるのはなにを連想しているのか。

ゾロは背中を丸めて、サンジの首の後ろで丸く飛び出す第七頸けい椎ついをしゃぶる。そのまま背骨を降りていくには、さすがに抜かないと届かないと思ったとき、サンジの背が弓なりに反った。

「ふぁっ! それ、やめ……」

「背中弱ぇよな」

「それより、てめえの、ヒゲ! チクチクすんだよ!」

 這うようにして上体を逃がすサンジをゾロがはっしと捕まえる。サンジの背中をザリザリと頬ずりした。

「ひんっ」

「それで、こんなに反応いいのか」

 ゾロは、ふーんと自分の頬を撫でる。

「伸ばそうとか、考えてんなよ!? 違うぞ、擽くすぐってぇだけだし、さっきまで平気だったんだからな!」

「平気ねえ。我慢してたんだろ?」

 スイッとサンジが目を逸らす。

「バカ正直なやつ」

ゾロが声を上げて笑い、背けた顎を掴んで後ろに向かせる。

ちゅ、くちゅ、と水音が響き、サンジが上側の脚を畳んで、自分とゾロの間を通そうとする。気づいたゾロが目を開けて、それでも口は離さずに、腹を上げ、サンジの肩脚を外に出したら、更にぴったりとくっついた。

ゾロの熱い掌が頬を撫で、首を擽り、胸元をまさぐる。胎内のゾロが固くなっていくのを感じる。それをもっと感じようと内壁を意識しながら収縮すれば、先ほど放たれたモノがコポッと漏れた。

「ゾロ…また、欲しくなっちまった」

「おう、造作もねえぞ」

 グリッと腰を回され、サンジがクスクス笑う。

「ふっ、知ってる」

 繋がったところに手を潜らせて、先端は自分の中にいるその根元に指を這わせる。

「ガッチガチ……」

 ペロリと唇を嘗めるサンジはこのうえなく淫蕩で。

「エロい」

「え? おれ?」

「他に誰がいるってんだ」

「そうだけど……可哀想だなぁ。おまえには、おれが可愛くてエロく見えちゃうわけだ」

「惚れてんだ、そんなもんだろ」

 起き上がったゾロがサンジの前髪をめくり、その額から頬にかけてを優しく撫でた。

 

言霊ことだまという言葉が浮かぶ。

そんなに何度も言葉にしてしまったら、言霊に縛られてしまうんじゃないかと心配になってくる。ゾロは約束をひたむきに守る男だから、その言葉がいつか枷になるんじゃないか、後悔するんじゃないか、と先んじた危疑きぎがサンジの中に浮かぶが、それを口にすることは歓よろこびが制した。

 

「おれが死にかけてたから、気付いたわけ?」

「なにに」

「その……気持ちっつうか」

「愛してるから欲しいんだってことか」

「あ、うん」

「とっくに分かってたぞ」

「っ! いつから!? なんでずっと言わなかったんだよ!」

 言わなきゃ良かった、という表情かおでゾロはサンジを抱き起すと、胡坐あぐらをかいた自分の上に抱え直した。

「あ―――ッ、ず、りぃ……ごま、かす……なぁ!」

 ずっとゆるゆると入口を捏ね回していたゾロ自身が深く突き刺さり、サンジに電流が走る。

「ごまかすわけじゃねえ」

「ん、ふっ……」

 ゾロの肩に手を回し、身体を支えるサンジの胸にゾロの舌が這う。尖らした舌先に加え、ヒゲの刺激が強い。

「分かっちゃいたんだ。他に言葉がないってことも。言いたくなかったんだよ」

「そりゃ、認めたく、ねえよな」

「違えよ。てめえがしょっちゅう、言いまくってっから、あんなのと一緒にされたくなかったんだよ!」

「ええ~~なんだよ、それ」

「いつから、は覚えてねえな。気付いたら惚れてた」

「そりゃ、仕方ねえ。恋はハリケーンだからな!」

 イラッと顔を顰しかめたゾロは、グイッと下から突き上げた。途端、甘い声を上げてサンジが弓なりになる。トントンとノックするように小刻みに腰を揺らす。

「そういう軽いのがイヤなんだって言ってんだろうが! 大体てめえは、ナミやロビンはともかく、初対面のオンナにまでよく愛だ恋だと言いまくれるな!」

「だ、って、女の子は、褒められて、キレイになるん、だぞ」

律動に声を詰まらせながら、言葉を続ける。

「レディは愛され、なきゃ、心の、栄養、だから…!」

 ポカンとゾロがサンジを見上げる。

 思わず動きまで止まっている。

「そうか……それで、今日はおまえ、やたらとキレイなのか」

 ぽわぁっとサンジの頬が染まる。

「バ、バカやろう! レディの話だって言ってんだろ。男がキレイなんて言われても嬉しくねえし!」

「愛してるぜ、サンジ」

 胸がきゅっと掴まれた気がして、サンジはゾロをぎゅっと抱きしめた。

「それは、ちょっと、嬉しい」

「ちょっとかよ」

 

 ゾロは苦笑しながら、律動を再開する。前戯だかお喋りだかわからない長い戯たわむれに、サンジも限界まで敏感になっているが、ゾロもまた、暴発寸前なのだ。

「あ、う、激し、こ、こわれ、そ…」

「壊れねえ」

「おく、すご…! あ、あ――…」

 サンジの眼はぎゅっと閉じ、目尻からひっきりなしに涙が頬を伝う。

「つれえか?」

「んんん! イイ、きも、ちィ――」

 真っ赤に膨らんだ乳首をベロッと舐め、濡れた粒を指でギュッと摘まむ。

「ヒィァッ」

 片方の乳首はそのままコロコロと指先で転がし、片方は吸い付いた口でジュッとわざと音を立てて強く吸う。

 下ろした片手はサンジのペニスを握り、上下に激しく動かす。時折、鈴口を潰すかのように親指でグリリッと突き刺し、また、偶さか優しく撫でる。

翻弄されるばかりとなったサンジは、ゾロにしがみついているのが精一杯だ。

いつのまにやら寝かされて、腰だけ高く持ち上げられている。もう達っているのじゃないか、というほど濃厚な液体がサンジの先端からは絶え間なく溢れる。

サンジが悦くなればなるほど、ゾロにも法悦の快感が押し寄せる。二人だから辿りつける絶頂へ、今、向かう。

「ゾロ…!」

 切ない声がゾロを呼び、凄まじいほど打ちつけながらも、サンジの顔の横に肘をつく。近づいた恋人の顔を引き寄せ、首に両手を巻きつけたサンジは、その唇にむしゃぶりついた。

耳を打つ水音はどちらから聞こえているのかわからないほど、上も下も激しく交わり合う。

 

「ああああああ!!」

 

 獣のような咆哮ののち、しばらく二人とも口もきけずに、ただ整わぬ息を絡ませていた。

 

六十億の人がいるのだというこの地で出会った偶然と、恋愛対象じゃなかったはずの同性を互いに愛した奇跡。ゆくりなくも始まり、こうして紡いでいける幸せは、生きていればこそ……。

「生きてて、よかった」

「ああ、おまえを失わなくて、良かった」

 

 青い明眸めいぼうがゾロをしっかりと見返している。ゾロは恭うやうやしくその目蓋にキスを落とした。

 

「さ! 海行くんだろ、服着るか」

「ええええ!? もうイイよ、寝ようぜ!」

「いや、男に二言はねえ。行くぞ」

「やーだーって。せめて、風呂入ってからー!!」

 

fin