揺籃歌

(寒い)

深い眠りの淵から、意識が浮上する。

布団を蹴飛ばしたかと、足を動かすが爪先まで包まれていて、すきま風もない。

手探りで冷気の方へ指を伸ばすと、冷たい固まりがある。ギョッとしたゾロの意識が一気に覚醒する。

見るとそこには、自身を抱えるようにして小さく横になる金髪コックの姿。

「コノヤロウ。」

人の睡眠を邪魔しながら、眠る料理人を憎々しげに見下ろす。

だが、安らかとは言えない眉間のシワ。着たままのセーターや髪の先まで冷え切った体。

自分のボンクの冷たい布団に入る気にはなれなかったのだろう。なのに、ぴったりくっつくのは流石に遠慮したのか、ゾロの布団の端っこに身を滑らせていて…。

「しょうがねぇな。」

小さく溜め息をつくと、サンジの体を引き寄せる。

ゾッとするほど冷たい足も、自身の足で挟んでやる。

「んぅ…。」

身じろいで小さな声を上げたサンジの背中をトントンと叩いてやる。

ふわっと表情が緩み、シワを刻んでいた眉頭から力が抜けた。

これまた氷のように冷たい頬を掌で包んでやるとすり寄るように押し付けて「ほぉ……」と安心しきった吐息を洩らした。

くくっとゾロの喉が鳴る。

抑えきれない笑みが口の端を上げる。

「ガキみてぇなツラしやがって。」

 

冷水での炊事を見かねたフランキーが湯沸かし器を取り付けた。油汚れには助かると喜んだコックだが、燃料がもったいないと極力使わないのだから、世話がない。

(早くこの凍てついた海域を抜ければ良い。貧乏性コックが凍っちまう。)

ゾロは半ば本気でそう願った。

 

 fin


翼さんのお誕生日プレゼントです。

翼さんは誕生日当日にSSくださったのに、わたしはパソコン壊れ、原稿に追われ、ひと月以上遅くなってしまいました。サイトお誕生日は3ヶ月遅れだったし、もう、呆れられちゃう(´;ω;`)

これを貰ってもらえたら、いただいたプレゼントを飾る資格ができる、勝手にそう決めて頑張ったんですが、

なんだか、妙な日常になってしまった。この二人出来てるんだろうか、無自覚っぽい気もする………

えっと、これ、貰ってくれる???