ハラハラと赤く染まった葉っぱが降り注ぐ。
カサカサと足元で音を立てる積もった枯れ葉まで美しく、来る人を古城へと誘う。
裏手には満々と澄んだ水をたたえた湖が広がり、その彼方には白く雪の積もった山が見える。
登山道から振り返ると湖に映った古城がまるで両翼を広げた白鳥のようだ。
その昔、領主がこよなく愛した妻のために建てた小さな城は、
城壁に囲まれた堅牢な居城とは違い、壁面を飾るモザイクの一つ一つまで美しい。
石造りの古い城はさぞかし、寒かろうと覚悟して足を踏み入れた者は、
昔の面影を壊すことなく丁寧な改装を重ねた暖かな佇まいにホッとすることだろう。
まるで、領主に、そして領民に愛された奥方の穏やかな人柄を今に伝えるようである。
GM号の一行がログに導かれ辿り着いたのは実り豊かな秋島だった。
「えぇっ!!ログ貯まるのに1ヶ月もかかるのか?」
停港許可の手続きをしてきたナミに、一同が驚きの声をあげる。
「そうなのよ。でね、いつものことだけど滞在費が心許ないじゃない?
相談したら勧めてくれたのが、この宿なの。」
どんな相談をしたのやら、と冷たいものを背に流しながら
パンフレットを覗き込んだウソップが、そのまま固まる。
どうした、どうした、と我先に覗き込んだ面々が不審な顔でナミを見返した。
それはそれは立派なお城が写っていたのである。
「何を隠してやがる。どんな裏があるんだ?」
代表して口を開いたのはゾロ。
「何も隠してないわよ、失礼ね。ただね。」と言いながら、パンフレットの一点を指す。
そこには品の良い洋食のコース料理の写真の上に大きな×が印されていた。
「ご飯が期待できないみたいなの。悪いんだけど、サンジくん滞在中も作ってくれる?」
「もちろん、喜んで~。なんだ、安い理由はそんなこと?」
「多分ね。」
それ以上の詳細は聞けなかったというナミ、ナミが問い質しても語らない紹介人に、
他の面々が聞いても無駄だろう、ととりあえず一行は宿に向かうこととした。
確かにパンフレットの写真は嘘では無かった。
ただし、繁殖力の強い蔦に絡まれた大部分は見ることも叶わなかったが。
一行を出迎えたのは愛らしい幼女と母親だった。
値段の交渉に入る前に、涙を流さんばかりの歓待を受け、ナミでさえ言い淀む。
「あのね、悪いんだけど、まだこちらって決めたわけじゃなくて・・・」
「外見はちょっと蔦がひどいことになってますけど、中は綺麗なんですよ。
ぜひ、ご覧になって検討してくださいな。」
「ご飯がつかないのよね?」
「朝食位ならなんとか!ちょっと歩きますけど、美味しいレストランも多いんですよ。」
「あー、そうじゃなくて・・・ぶっちゃけ、うち貧乏なのよ!!
こんな高そうなホテル泊まれないわ。
ここの食事なしが一番安いっ聞いて来ただけなの!」
「それなら、確かにそうだと思いますわ。」
ナミが空を仰ぐ。
「うそでしょう?この島そんなに物価高いの?船で寝泊まりするしかないかしら・・・。」