歯列をなぞり、唾液を吸う。先ほどの遊びのようなキスとは違う情欲を高める口接け。
「はっ、喰われそ・・・」
「食っちまいてーな。このタチの悪ぃカラダ。」
ガフガフと白い首に歯を立てる。
「ははっ、は、ァッ・・・なー、なんで今日そんなに機嫌良いんだよ。」
「機嫌良いのはてめぇだろ?」
「んっ、ちが・・・」首からゾロの頭を引き剥がす。
「あー、もう!てめぇが、絡んでこねーからだろ。昼間っからご機嫌だったじゃねーか、気持ち悪ぃ。」
「気持ち悪ぃこたねーだろ。あ、あれか。」
「なんだよ。」
首だけガードしている男の無防備な下半身に移ろうか、少し迷ってさっさと会話を終わらすことにする。
「てめぇが、ここの女主人にデレデレしてねーから。なんでだ?」
「へ?あれ?そうか?なんてこった!失礼なことをしちまった!」
デレデレしねーのは失礼なのか、こいつん中では。
乾き始めた金髪を梳きながら、苦笑する。
どう育てたら、そんな奇っ怪な思考回路を持っちまうのか、赫足のオッサンに聞いてみたいもんだ。
「大したこっちゃねーんだけどよ。最初に朝飯位なら出せるって言ったの覚えてっか?」
サンジがあるか無きかのぽしょぽしょとした顎髭を触りながら問いかける。
「起きたばっかで普通はそんなに食わねーしよ。軽く扱う気持ちは分かんだぜ。
でもよー、なんか、引っかかっちまってな。
位ってモンを客に出すか、とか・・・こまけーことなんだけどな。」
へらっと笑うサンジの頭を抱き寄せる。
「てめぇはプロだな、こんなにガラの悪ぃ海賊なのにな。」
「てめぇよかジェントルマンだ。」
「だからメロメロしてなかったのか。」
「かな。意識してなかった。」
サンジがメロメロしてないと機嫌が良いと臆面もなく言う男のピアスをチリチリと揺らしながら、ちょっと控えてやっかな、と考える。
さて、と頭を起こしたゾロが手近な耳に舌を這わしたとき、サンジがなぁ、なぁと声をかける。
「てめぇ、まだ喋んのかよっ」
「だって、おれ、今日疲れてるみてーでさ。立たねーんだよ。」
「・・・」
サンジが勃起しなくても、ぶっちゃけ問題無い。
前がどうでもイクし、イカセる自信もある。
だが・・・、おれの腹を押し上げてんのは何だと言うのだ。
腰を浮かせて下を見ろと促す。
「わーお。ダブルスタンダードばんざーい。」
アホだ。
「はいはい。万歳、万歳。」
パチパチと拍手しているサンジの両手を頭上で絡める。
「おっかしーな。さっき、直で触っても立たなかったんだぜー」
口接けの合間にサンジがぼやく。目尻を舐めても、耳殻を撫でても挟まれたモノはぴくぴくと反応している。ゾロは顔が綻ぶのが止められない。
一人では兆さなかったのに、二人ならこんなに感じると暴露しているんだから浮かれないわけがない。
間抜けな言葉が、嬌声に変わるまで、あと少し。