見張り台から、水平線の近くまで移動した月を見やる。
すっかり夜も更けたというのに、コックが来ない。
常なら、なにか作業が残っていたとしても、夜食を持ってきてからキッチンに戻るのに、今晩は一度も顔を出していないのだ。
胸騒ぎがして、縄梯子を滑り降りた。
キッチンの扉を開けると、グラスをくるくるとクロスで拭いている姿が目に入り、杞憂だったかと胸を撫で下ろす。
こいつはどうにも危なっかしくて、つい過保護になっちまう。
気恥ずかしく思いながら、声をかけようとして、違和感を覚えた。
いつまで拭いているんだ?同じグラスを。
そもそも、いつから拭いていた?布はすっかり乾いているじゃないか。
そして、なぜ、こっちを見ねえ?
「おい。」
サンジの手からグラスを取り上げる。
そこまでして、ようやくこっちに顔を向けた、その表情にはなんの色も浮かんでいなかった。
恐ろしいまでの無表情。
ペチペチと頬を叩いても正気にかえらないのを見て、一か八か接吻ける。
手でサンジの目を覆い、目蓋も閉じさせる。
そうすると、意識が口に移ったのだろう、絡めた舌に反応が返ってきた。
顔を離せば、焦点が定まった碧眼がちゃんとおれを見た。
それだけでホッとしたのも束の間、サンジはおれの襟を掴み上げてきた。
「ゾロ、ゾロ、頼む。今すぐ、やろう。早く…! ゾロ…入れて……。」
ずるずると、おれの足元に膝まづくと、ズボンのファスナーに手をかけてきた。
「やめ…ちょっと、待て。」
やめろ、と言いかけて口をつぐむ。
サンジは、拒絶の言葉に敏感だ。
膝立ちになっているサンジのすぐ前にベタリと座り、下から見上げるようにしながら、サンジの両手首を掴んだ。
「なにがあった? 一人で考えねえ約束をしたな?」
「明日には……島に着くって、ナミさんが……。」
「それがどうした?」
「今回の航海は長かったから、ゆっくりしましょうって。」
「ん? よかったじゃねえか。食料もかなり厳しくなってたんだろ?」
「うん。」
それだけ喋ったサンジの手が小刻みに震え出す。
膝立ちのままのサンジを引き寄せ抱きしめると、ほぉっと小さく息を吐きながら肩に頬をすり寄せて見上げてくる。
「ゾロ…抱いてくんね?」
薄く開けた口から覗いた紅色の舌がちろりと唇を舐め、閉じては開けてようやく出た言葉。
逡巡するようにサンジの瞳が揺れる。
言ってから恥じ入るようにきゅっと唇を噛む。うっすらと赤らんだ目許に視線が流れる。
その艶っぽい仕草に耐えられなかった。
ワケを聞く余裕も無く、サンジを押し倒し、口付けながらシャツを剥ぎ取った。
桃色の乳首が慎ましやかに咲いているのを、赤く立ち上がるまで舐め転がす。
最近では、毎晩のように触っている体だが、サンジが眠くなる程度までの軽いボディタッチに留めていたから
堪能するのは久しぶり。我ながらしつこいと思うほど、飴玉をしゃぶるようにかわるがわる口の中に含み続けた。
空いた片方は指で摘み転し、掌で全体も揉んで、撫でる手は脇をさすって腰まで下ろした。
そのとき、おれの肩に置かれていたサンジの手が突如突っ張り、おれを引き剥がそうとしているのかと思うやいなや
両手で口を覆って、胸を突き出すように背中を浮かせた。
「あ!ああ!ふっ、ンぁ――…… は、はぁっ……ッ!」
全身を突っ張らせてガクガクと震えたサンジは、まだ下肢には触れていないどころか脱がしてもいないというのに、達していた。
ジワリと濡れた前立てを撫でると、クルリと横臥して隠そうとする。
「悪ぃ。おれ………。」
「別に悪かねえ。毎日触ってたからな、敏感になってたんだろ。」
耳元に口付け、ネトリと舌を差し込む。
横臥している不安定な身体がグラグラ揺れる。
チュクチュクと舌を出し入れし、耳たぶを甘噛みしてやると、ビクッとサンジの顎が上がった。
「今度は耳だけでイケるようにしてやろうな。」
「して、いらん。アホ……。」
真っ赤な顔で言われても、肯定としか取れねえな。
スラックスと下着を下ろすと、まだ半勃ちのペニスがねっとりと糸を引きながら、ぷるんと震えた。