慟哭Z 6

見張り台から、水平線の近くまで移動した月を見やる。

すっかり夜も更けたというのに、コックが来ない。

常なら、なにか作業が残っていたとしても、夜食を持ってきてからキッチンに戻るのに、今晩は一度も顔を出していないのだ。

胸騒ぎがして、縄梯子を滑り降りた。

 

キッチンの扉を開けると、グラスをくるくるとクロスで拭いている姿が目に入り、杞憂だったかと胸を撫で下ろす。

こいつはどうにも危なっかしくて、つい過保護になっちまう。

気恥ずかしく思いながら、声をかけようとして、違和感を覚えた。


いつまで拭いているんだ?同じグラスを。

 

そもそも、いつから拭いていた?布はすっかり乾いているじゃないか。

 

そして、なぜ、こっちを見ねえ?

 

「おい。」

サンジの手からグラスを取り上げる。

そこまでして、ようやくこっちに顔を向けた、その表情にはなんの色も浮かんでいなかった。

恐ろしいまでの無表情。

 

ペチペチと頬を叩いても正気にかえらないのを見て、一か八か接吻ける。

手でサンジの目を覆い、目蓋も閉じさせる。

そうすると、意識が口に移ったのだろう、絡めた舌に反応が返ってきた。

 

顔を離せば、焦点が定まった碧眼がちゃんとおれを見た。

それだけでホッとしたのも束の間、サンジはおれの襟を掴み上げてきた。

 

「ゾロ、ゾロ、頼む。今すぐ、やろう。早く…! ゾロ…入れて……。」

ずるずると、おれの足元に膝まづくと、ズボンのファスナーに手をかけてきた。

「やめ…ちょっと、待て。」

やめろ、と言いかけて口をつぐむ。

サンジは、拒絶の言葉に敏感だ。


膝立ちになっているサンジのすぐ前にベタリと座り、下から見上げるようにしながら、サンジの両手首を掴んだ。

「なにがあった? 一人で考えねえ約束をしたな?」

「明日には……島に着くって、ナミさんが……。」

「それがどうした?」

「今回の航海は長かったから、ゆっくりしましょうって。」

「ん? よかったじゃねえか。食料もかなり厳しくなってたんだろ?」

「うん。」

それだけ喋ったサンジの手が小刻みに震え出す。

膝立ちのままのサンジを引き寄せ抱きしめると、ほぉっと小さく息を吐きながら肩に頬をすり寄せて見上げてくる。

 

「ゾロ…抱いてくんね?」

 薄く開けた口から覗いた紅色の舌がちろりと唇を舐め、閉じては開けてようやく出た言葉。

逡巡するようにサンジの瞳が揺れる。

言ってから恥じ入るようにきゅっと唇を噛む。うっすらと赤らんだ目許に視線が流れる。

 

その艶っぽい仕草に耐えられなかった。

ワケを聞く余裕も無く、サンジを押し倒し、口付けながらシャツを剥ぎ取った。

桃色の乳首が慎ましやかに咲いているのを、赤く立ち上がるまで舐め転がす。

最近では、毎晩のように触っている体だが、サンジが眠くなる程度までの軽いボディタッチに留めていたから

堪能するのは久しぶり。我ながらしつこいと思うほど、飴玉をしゃぶるようにかわるがわる口の中に含み続けた。

空いた片方は指で摘み転し、掌で全体も揉んで、撫でる手は脇をさすって腰まで下ろした。

そのとき、おれの肩に置かれていたサンジの手が突如突っ張り、おれを引き剥がそうとしているのかと思うやいなや

両手で口を覆って、胸を突き出すように背中を浮かせた。

「あ!ああ!ふっ、ンぁ――…… は、はぁっ……ッ!」

全身を突っ張らせてガクガクと震えたサンジは、まだ下肢には触れていないどころか脱がしてもいないというのに、達していた。

ジワリと濡れた前立てを撫でると、クルリと横臥して隠そうとする。

「悪ぃ。おれ………。」

「別に悪かねえ。毎日触ってたからな、敏感になってたんだろ。」

耳元に口付け、ネトリと舌を差し込む。

横臥している不安定な身体がグラグラ揺れる。

チュクチュクと舌を出し入れし、耳たぶを甘噛みしてやると、ビクッとサンジの顎が上がった。

「今度は耳だけでイケるようにしてやろうな。」

「して、いらん。アホ……。」

真っ赤な顔で言われても、肯定としか取れねえな。

 

スラックスと下着を下ろすと、まだ半勃ちのペニスがねっとりと糸を引きながら、ぷるんと震えた。

 

 

cintinue