魚の見る夢 2

「おれ、便所寄ってくっから。てめぇ、先戻ってろ。」

「ああ?その辺でいいじゃねえか。」

「いいわけあるか、ぼけ!無いならともかく目の前に船があんのにその辺で済ます神経がわからん。あ、みんなんとこわかるか?」

「それこそ目の前じゃねえか!」

フンッと踵を返すと焚き火の方に一歩を踏み出したゾロがクルリと振り向いた。

「あ、あれか。掻き出してやっか?」

「いらん!」

 

 

 

「ああ、くっそ。ムカつく、クソマリモ〜〜!」

ドスドスと船に上ったサンジが芝生を進むと、足元がベチャと濡れていた。

「ん?水零してたか?」

 

屈もうとしたそのとき、しゅるるるる……と近づいた何かがサンジの足首を捉えた。

「う、っわああああ!」

 足首にヌルッとしたものが巻き付き、慌てて片脚で踏み潰す。

そうする間にも、何本もの細い触手が身体中に巻きついていく。掴んで振り払うと簡単に剥がれるが、多勢に無勢。無数の触手に絡め取られ、サンジは空中に吊るし上げられた。

「やめっ……ちくしょ!」

ゆるい開襟シャツの裾から、触手が入り込む。手に巻き付いたそれを振り払い、腹で蠢く先端を掴んでちぎろうとすると、ビリッと痺れた。

「って!」

見ると、触手の先端の小さな袋から針が飛び出していた。

「毒……こいつぁイソギンチャクか?」

サニー号の船べりから現れた本体は、随分大きくはあるがハタゴイソギンチャクそのものであった。

波打つ口盤を見て、サンジが青褪める。イソギンチャクは小動物をその触手で捉え、毒薬で痺れている閒に食す肉食動物である。本来人間に害を及ぼ押す程の毒性は無いのだが……サイズに問題がある。

そうする間にも、触手はサンジを絡め取り、痺れる身体から力が抜けていく。

 

(触手を何本やったって仕方ねえ。口に近づいたとき、本体を蹴り潰してやる。)

 

触手はシャツの内部に入り込み前あきのボタンが吹っ飛んだ。麻のパンツが引き摺り下ろされ、下肢が露わになった。つるし上げられたまま空中を運ばれ、本体に近づいたとき、今だ、と脚を振り上げると急所に触手がまとわりついた。

「え? うっわああああああ。」

愛を交わしたばかりの敏感なそこに容赦なく触手が絡まる。

肉竿を絡め取られ、先端を割られ、あっけなくサンジは吐精した。ぽたぽたと白濁が散ったそこはサンゴのツルリとした部分で、無数の半透明の球体……卵があった。

 

急所を掴まれてもなお、振り上げた脚に力を籠め、イソギンチャクに向かって振り下ろすが、吐精を果たしたばかりでいつもの威力は無く、連打する前に再び空中高くへ身体を持ち上げられてしまう。

竿に絡んだ触手が蠢き、再び屹立させられるが、立て続けに出せるものでもない。

 

「うあ!……ひぃっ んんっ!」

先端の割れ目をチュルチュルと撫でていた触手の一つが入り込む。刺すような痛みとともに、猛烈な快感が湧き上がる。

枝分かれした触手の一つがズルズルと尿道管を這い上がってくる。

 

「あ あ ああ ああ ああああ……」

初めて味わう刺激に、抵抗も忘れサンジの口から嬌声が漏れる。

開きっぱなしの口からツーっと唾液が糸を引いた。

 

「ああん! ふっ ふぁ―――」

後孔に差し込まれた触手がグジュグジュと蠢き、射精感が迫り上がる。が、そのとき、ただ抜き差ししていた触手が鉤爪のように先端を曲げた。

サンジの後ろから、先ほど放たれたゾロの白濁液が溢れ出す。

そこに触手が集まり、拭い取られる感触に、再びサンジは身悶える。

「あ、ああ!やめ、やめろぉ…それは、それは……おれんだ!ゾロッ ゾロ!」

 

実を結ぶことはないけれど。

流してしまうだけのモノだけど。

それでも、それは愛された証でもあった。

 

 

続く射精は体力を奪う。
毒の痺れも手伝って、朦朧とする。
執拗に精液を求める触手が、身体を這い回り、快感がせり上がった。
寄生した魚卵を受精させるならば、人間のモノなど役に立たないと言うのに、体液の区別もつかないのであろう触手は、ただサンジの体液を求める。
口をこじ開けた触手は唾液を貪り、男根にまといついたソレは絞るように蠢く。鈴口から入り込んだモノにせき止められているのに、周囲からの刺激は続き、後孔のゾロの精液をえぐり出しているモノからも絶え間ない刺激が送られ続けた。
達しても終わらない泥沼のような悦楽の渦に落ちたサンジは思考力すら奪われていく。

 


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