「風呂も入ってんのか?」
ゾロが帰りの遅いサンジを思い、ふと船の方に目をやると、穏やかな水面に浮かんだ船がグワンッと大きく揺れた。
大波が来たわけではない。
サニー号だけが。
「コック!?」
駆け上がった甲板には、無数のウネウネと蠢く異様な物体。
その中の数本に片脚を捕らえられたサンジが高く中空で釣り下げられている。
壊れた人形のように。
逆さまの身体。
もう片方の脚にも膝の辺りに絡まる触手が引っ張っているのか、ただ持ち上げる力が無いのか、つま先が顔の前で揺れている。
両手はダランとぶら下がり、血が集まっているのだろう、赤く染まった顔だけが生きていることを伺わせた。
「なんだ!?こりゃ! おい、コック!!」
「ゾ……」
「二刀流!犀、回!!」
ドガガガー!
旋回するゾロの周囲に気流が巻き上がり、切り飛ばされた触手が舞い上がる。
ふわりと浮いたサンジの身体が落ちる。
鞘に納めたゾロが両手を伸ばし、その身体を抱き留めた。
「プレイにしちゃ、激しいんじゃねーか?」
「クソ、ヤロゥ…」
ベットリと白濁にまみれたサンジの股間を見やり
「おれ以外のモンにイかされてんじゃねーよ。」
「くだんねーこと、言ってねーで 早く抜け……」
後孔から垂れ下がっている二本の触手を掴み、抜き去った。
「…ん…っ……!!」
前にも突き刺さっているソレをズルリと引く。
「あ!あぁあ、ん!…ふっ、ぁあっ…んっくぅ――!」
あまりのイイ声に、思わず引いたソレを少し押し戻す。
「いやあああ!あ、あ、はぁっ……ナニ入れてんだ!バ、カヤロウ!!」
「良さそうな声出しやがって。」
残りを一気に引き抜くとグッタリとサンジがゾロの胸に全身を預けた。
「勘弁しろよ……新しい扉開いちまう……」
「開発してやっか。」
「おろすぞ。」
常々、後ろだけで十分、男としてどうなのか、という葛藤を抱えている身としては、これ以上の開発など本当に遠慮したかった。
だが、思いがけない部分での悦楽を知ってしまった以上、ゾロに強く望まれたら断れないだろう自分も軽く想像がついたのだった。
「なぁ、身体…洗いてぇ。」
「風呂行くか。」
「風呂の分まで水汲んでねーよ。滝行こーぜ。」
ひょい、ひょい、とゾロに抱えられて崖を上がったサンジは清水に横たわり、大きな満月の光の下に白磁のような身を晒してほぉっと息を吐いた。
目を細めその姿を見ながらゾロが声をかける。
「ありゃ、なんだったんだ。」
「昼間の海域から連れて来ちまったか、この辺のがおれらの捨てた海水ででかくなっちまったか分かんねーけど、ハタゴイソギンチャクだな。
共生してる魚の……多分カクレクマノミの卵もバカでかくなってやがった。
なのに、デカいオスがいなくて探してるとこに、おれが行っちまったのかな…。
イソギンチャクが魚のために動くなんて聞いたことねぇけどよ……」
フと視線を下げたサンジの頬にゾロが手を伸ばす。
「てめぇのも取られちまった。」
「おれの?」
「てめぇのせーえ…」
いやいや、何言おうとしてるんだよ、と我に返ったサンジが口ごもるが、案外察しのいい男はニヤリと笑い、サンジを引き寄せた。
全身に及んだ針の跡を一つ一つ吸っていく。毒を吸い出そうというのか、跡を上書きしようとしているのか、まるで儀式のようなそれを受けるサンジが徐々に息を乱す。
「ゾロ…なぁ、ナカも…刺された…」
ヌルリと舐めると、そこはキュッと収縮し、パクパクと震えた。
両手で後孔を広げ、固く尖らした舌を差し入れ、充分解れていることを確認したゾロは、堅い熱塊を押し込む。
「全部てめぇんだ。溺れるまで飲み込めやがれ!」
「うあ!あぁん!あ!あ、あっくぅ、はぁっ……」
常なら精一杯殺している声も、体力を消耗しきった身体では抑えられない。
だだ漏れの声にゾロはますます昂ぶり、疲れきった身体が悲鳴をあげてもサンジの心が欲した。
洗っても拭いきれない得体の知れないモノの感触を愛しい男が消してくれる。
明るい朝の光に包まれ、睡魔に抗えなくなるるまで、二人は夢中になって互いを慈しんだ。
「きゃー!!なに、これ!」
「うっわ、気持ち悪ぃー!」
「お!でっけぇイクラがあるぞぉー!?」
「やめなさい!お腹壊すわよ。」
崖下から上がる喧騒にガバっとサンジが飛び起きる。
「やっべ!あ、いてててて…」
「んあ?朝か?」
「朝だよ!このクソボケ!」
「おー、おー、騒いでんなぁ。てめぇのザーメンまみれだってのに。」
ガハハと笑うゾロを蹴り上げるサンジは、真っ赤に染まっていた。
「とにかく、おれの服持って来い!とっとと掃除しに戻るぞ!あ、余計なことは言うなよ!」
余計なことを言わずにどうやって大騒ぎしている仲間を突き抜け、サンジの服を拾い集め、またここに戻って来れるというのか。
「めんどくせーヤツ……」
はあー ヤレヤレ、と肩をすくめるゾロにスッコーン!と片方の靴が飛んで来た。
fin