最後の最後に飛行機に遅れなんて残念だけど、でもとっても楽しかったよね。これだからやめられないのにね~♪
 あ、そうそう、成田からのバス、なんとか最終便に間に合いそうよ。お腹空いちゃったけど、何か食べるのは都心まで我慢しましょう。
 * * * * *
 わー、並んでる。大丈夫かな、乗れるかなあ。1、2、3……あ、よかった、ギリギリ平気ね。最後から2番目なんて、本当滑り込みね。
「荷物が重そうだ。ステップ上るの危なっかしいなあ。ほら、先乗って。荷物は俺が運んであげるよ」
 え?
「ほら、早く乗った乗った。俺が最後の乗客だよ。早く乗って、お互い早く帰ろうよ。ね」
 じゃあ、すみません。これとこれ、お願いします。
「すみませんじゃなくてありがとうの方がいいなあ。はいよっと。ここで大丈夫かな。うん、よさそうだ」
 本当にありがとうございます。助かりました。
「いえいえ。女性を助けなかったなんてばれたら弟に怒られちゃうんでね。さて、到着まで一眠りするかな。あー、腹減った」
 ………………。
 もう寝ちゃったみたいね、この人。この荷物を軽々運んじゃうなんて。それにさりげなさも格好よかったよね。
 やだ、別にそんなんじゃないわよ。やめてよ、コーザが変な誤解しちゃうじゃない。冗談でもよしてよ。結構大変なんだから。そう、やきもちというか拗ねるというか。そんな心配ないのに。
 ノロケって、もう! そんなんじゃないってば!
 あ……静かにしなきゃ。
 うん、そうしましょ。寝過ごさないようにしないとね。
 * * * * *
「ほら、持って下りるから貸して~」
 あ、すみま……、そうね、ありがとうございます。
「うん、どういたしまして。……あ」
 クスクスクス すごいお腹の音。
「あー、機内で食いっぱぐれたんだ。関空で何か食べようと思ったら乗り継ぎまでに時間ないし、成田でもこのバスを逃したらここまで来れないだろう? もう餓死寸前だよ」
 え? あ、そうね。ご一緒しましょう。でも、初対面で失礼かしら。
「いや、そんなことないよ。ただ、行く店、決めているんだよね。そこでいい? もう閉店しているから残り物しか出してもらえないけど、それさえも味を保障するよ。今開いている店のどこに入るより満足するよ。どう? そこなら俺も腹一杯食べられるし」
 うん、いいですよ。
「じゃあ、決まり。こっちだよ」
 あ、荷物。
「気にしない、気にしない。これくらい大したことないから。それに、これを持たせたまま店になんか行ったら、おれが蹴り出されちゃうからね」
 ……あら? こっちって……うん、そう、今度連れていくって話していたお店がこっちなの。ほら、あのお店。
「あれ? この店、知ってるの?」
 はい! 会社のお友達に連れて来てもらってから、よくランチに来るんです。
「それはラッキー♪ おーい、サンちゃん、飯食わせてー」
「今夜はもう閉店ですクソお客さま……って、ビビちゃ~ん♪ それに麗しいお姉様♪ ようこそ! さあさあ、どうぞ中へ。寒かったでしょ。すぐに温かいものをお出しするよ~。おら、エース、そのレディ達のお荷物はこちらへ丁寧に置いておけ。で、てめえは同じテーブルに座るな」
「え、なんで?」
「そのテーブルに乗りきらねえだろうが。レディにお出しした残りのスペース分の量でいいならいいぞ」
「隣にしま~す♪」
「レディたち、今メニューをお持ちしますね」
 あ、サンジさん、閉店してるでしょ。メニューなんてとんでもない、私たち、いただけるものなら何でもいいから、サンジさんのご迷惑にならないものをお願いします。
「何言ってるの、ビビちゃん! レディ二人のために腕を振るえるなんて、光栄の至りってもんだよ~」
「サンちゃん、俺は-」
「テメエは生肉でも食っとけ」
「えー、差別だー。でも、そうだな、せっかくだから、メニューにない賄い飯みたいなものがいいんじゃない? それってちょっと特別感があるよね」
「賄い?」
 それ、素敵! 裏メニューとかって憧れちゃうところがあります。ね!
「本当にそんなのでいいの?」
 むしろそれがいいです。サンジさんの作るお料理はみんな本当に美味しいの。だから、賄いも絶対美味しいって分かるもの。それに、今食べなかったら絶対にもう食べられない気がするわ。
「でも、そちらのレディは初めてのご来店なのに、賄いは失礼じゃないかなあ。大丈夫?」
 ほらね、女子ってそういう特別感も大好きだものねー♪
「それなら、今店に残っている食材でスペシャルワンプレートを作ってくるよ。待っててね~!」
「サンちゃん、サンちゃん、俺のも忘れないでねっ!!」
「本当は忘れてえところだが、レディをお二人も連れて来た褒美だ、作ってやるから待ってろ」
「あーよかった。本当に忘れられてるかと思ったよ」
 弟さんって、サンジさんの事だったんですか?
「ああ、そう、あれが俺の弟。すっごい女尊男碑なんだ。めちゃめちゃ女の子が大好きだから、いつでも来てやって。少々煩いけどね。女好きっていっても絶対危険はないから安心して」
 サンジさん、とっても紳士ですもんね。
「紳士……、まあ、紳士ではある、の、かな? ちょっと微妙な……、まあいいか。それもあるけど……ん?」
「あ、わりい。レディ達にスペシャルプレートをお作りすることになったから。先帰ってていいぞ。おー、そうだ、エースが帰ってきた。あ? 店。レディの荷物持ちしていたから、あいつにも褒美をやらなきゃいけねえからさ」
 あら。あの人、ここのウェイターさんよ。今大学生ですって。サンジさんと二人並んでいると、ちょっと堪らないわよねー♪
「おー、ゾロ! 久しぶりだな。ただいまー」
「久しぶり。今回はどこへ行ってたんだ?」
「んー、ちょっと今回は秘密。いろいろあるんだ」
「そうか。まあ、聞かねえよ」
「仲良くやってる?」
「まあな」
「まだ一緒に暮らさないのか?」
「こいつはまだ学生だからな。そういうことは一人前になってからだ。はい、レディたち、お待たせ~! 愛情たっぷりの特製プレートだよ~♪ オラ、エースも」
 うわあ、素敵!
「いただきまーす! やっぱりサンちゃんの飯が一番美味いなー♪」
「当たり前だ。コラ、もう少し落ち着いて食いやがれ!」
 ね、すっごく美味しくて、奇麗でしょう? 連れてきたかったのが分かるでしょ。
「ビビちゃんにお褒めいただき幸せー! こちらのお姉様のお口に合ったなら更に幸せー!!」
「お前が横にいてもこの調子なんだな、相変わらず」
「これがなくなったら、それはそれで何だか気味悪かねえか?」
「確かにな」
 聞いた? 一緒に暮らす、ですって! まことしやかな噂では聞いているのよ、あの二人。やっぱりそうなのかしら。
 えー、何て聞くのよ。それに、もし公にしていないなら悪いじゃない。オープンなのもいいけれど、隠す関係も素敵よね。
 そうよ、結局どっちのシチュエーションも好きなの!
「そうだ、エース、今回はいつまでこっちにいる?」
「ん? なんで?」
「いや、シャンクスが連絡取れないとかぼやいていたのを思い出した」
「あー……、ありがとな。俺から連絡するよ」
「レディ達、レモン水じゃなくてミント水をお持ちしましたよ~。なんだ、エース、あのオッサンになに頼んだんだ?」
「んー? 仲介を頼んだだけだ。まあ、そのうち話すよ。それより、これ、おかわりーモグモグ」
「あんまり変なことに首突っ込むなよ。マリモ、帰ってていいぞ。つうか、帰れ。でもって、部屋暖めとけ」
「分かった。じゃあな、エース」
「まだしばらくいるから、そのうち遊ぼうぜー」
 ミスター・ブシドー、帰っちゃうのね。残念。
 でも、今度は営業中に来ましょうね。彼のウェイター姿とか、サンジさんとのアイコンタクトとか、思いっきり目の保養だから。
 ……次のイベントに向けての糧にしましょうね、ふふふ♪


End.

このお話の元になったのはやぎの珍道中です。ほんっとに大変だったんですよw