コーリング 15

刺すような腹部の痛みで目を覚ましたサンジは、ギシギシと軋む体を叱咤して階下へ足を運んだ。

 

温かい湯に肢体を沈めると、すべて夢だったような気がしてくる。

手首に視線を落とす。

そこには隠しようもない縛られた痕があった。

 

 

 

二人の関係で恐怖を感じるのは初めてではない。

立場の違う受け身のセックスに。

変わっていく自分の体に。

一人で生きていけなくなるんじゃないかと感じたときに。

 

けれど。

 

ゾロ自身を怖いと感じたのは初めてだった。

 

 

 

「くそっ」

振り切るように立ち上がると、身仕度を整えた。

 

 

 

肌寒い朝の空気の中、なだらかな山道を上りながらも、頭を占めるのは迷いなく突き進む男のことばかり。

要るもの、要らないものをきっちり分けて、不要と決めたら二度と振り返らない。

その男らしい潔さには、憧れすら抱いていた。

 

どうして、自分は特別だと信じてた?

 

仲間だから、男だから、一緒に走り続けられるって?

 

勝手について歩くのも同じだな。

 

 

木々の隙間から城が見え隠れしている。

あと、少し。なのに、サンジの足は縫い止められたように動かない。

そのまま、ズルズルと大樹の根元に座り込んだ。

 

 

対等だと思っていたのは間違いだったのか。

単純に戦闘力を比較したら、負けるだろう。

目指すものが違うのだから当たり前だ。

しかし、闘いにおいて引けを取るつもりはなかった。

「完敗じゃねえか」

自嘲気味に歪めた口にタバコを挟む。

 

この関係はゾロの気持ち次第。

愛の交歓ゆえ躰を繋げると思っていたサンジにとって、それは耐え難い衝撃だった。

そうするのも、暴行にするも、ゾロの手のひらの上。

簡単に認められることではなかった。

 

 

「サーンジー!!」

軽快な蹄の音とともに心配げな声がする。

 

座ったまま手を差し伸べるサンジの顔は赤く腫れ上がり、唇の端が切れていた。

 

瞬時に人獣の姿に戻ると涙目で訴える。

「朝ご飯の時間なのに、サンジいねーから!外で匂いがしたから迎えに来たんだ。何やってたんだよ、そんなカッコになって!」

 

「酔っ払いとケンカしてな、ちょっとしくじっただけだ。朝メシはどうした?」

「お肉屋さんがハムやソーセージを持って来たんだ!ウィンリーも一人で何か焼いてて、うまそうだぞ!」

「食べずに来てくれたのか?悪かったな。」

「みんな待ってるぞ。ルフィだって、ウソップとゾロが止めてるから食ってねぇぞ。ナミが、サンジがチェックするまで食べちゃダメだって言ったんだ!」

「マリモも、いるのか・・・?」

「うん!ちゃんと起きてるぞ!」

「そう・・・か。レディたちをお待たせしちゃいけねぇ、急いで帰るか」

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