祈り 1

白い部屋で横たわる男を見下ろす。

屈強な印象しかない男の肌色は青ざめ、頬が痩けている。

点滴のついてない方の手を握る。

「寝ぼすけ。いい加減に起きろってんだ。」

 

膝をつき、手に触れると、仄かに温かい。

温もりを分けるように、両手で大きな掌を包み込む。

指を絡めてもダラリと脱力したまま。 

「握り返せよ、バカヤロー」

傍らに跪き、頬を寄せ、掌に口接ける。

 

「ゾロ。なぁ、触ってくれよ。」

おずおずと片手を下げ、スラックスの中に潜り込ませる。

「あ、ダメだ・・・おれ、こんなとこで・・・」

 

 

 

 

シャッとカーテンが開かれる。

「うわぁっ!」

信じらんねー!ドアが開く音に気がつかないなんて!!激しく後悔しながらアタフタと衣服を正す。

 

「ふーん。失礼。彼は君の恋人?」

「あ、あの・・・すみません、おれ・・」

「あぁ、続けていいよ?眠りっぱなしじゃ寂しいよねぇ。」

いやに冷たい目をした白衣の男がずかずかと入ってくる。

 

「おれはこういった症例得意でね。彼を目覚めさせるために呼ばれた医者だ。」

自己紹介のつもりか突然かけられた言葉にサンジは喜色を浮かべる。

「ゾロを治せんのか!」

「今日は様子を見に来ただけさ。まだ、引き受けるとは言ってない。」

「なっ!医者なら!治せるなら治せよ!!」

酷薄な笑みを浮かべパイプイスに座る。

 

「じゃぁ、楽しませてもらおうか。」

「は?」

「さっきの続きをしてごらん?」

「ふざけんな!クソヤロー!」

「できない?じゃ、いいよ。おれも自分の病院に帰るとするかな。」

「ゾロ、診てくんねーの?」

「おれが診る必要ないだろ?」

サンジがどんなに睨みつけようと、男の表情に変化はない。

「・・・オナれば良いのかよ・・・」

観念したサンジの消え入りそうな言葉に、口の端をフッと歪め、どうぞ、というように手の先をひらめかせる。

「くそっ」

男の視線を遮るように半ば後ろを向き、仕舞ったばかりの男根を取り出して、性急に擦り上げる。

いっそ勃たなければいいのに、さっきまでの熱が収まっていない身体は簡単に半勃ちになる。

しかし、さすがに、他人の視線を感じながら、それ以上の兆しは見えない。

 

 

しばらく無言で見ていたローが立ち上がりひょいと足払いをかけると、よろけたサンジの下肢を露わにした。

 

「なにすんだ!てめぇ!」

倒れながらも、怒鳴りつけるサンジを足蹴にし、優しい口調で尋ねる。

「きみネコだろう。前だけじゃダメなんじゃないか?」

「いや、大丈夫・・・」

機嫌を損ねない程度の力加減で、乗っかっている足を払おうとする。

「動くな!!思い出せよ、交渉決裂して困るのはどっちだ?」

 

 

蒼白な顔で耐えるしかなかった。

プラスチック容器の口を突っ込まれても、

腹の中に冷たい潤滑油を満たされても、

細長い物を当てがわれても、サンジは小刻みに震えながら、耐えたのだった。

 

 

ブブブブブブブブブ・・・

絶え間なく聞こえる機械音が鼓膜を焼く。

 

「な、に・・これ」

「アナルバイブ。こういうの使わない派?

 あぁ、彼、立派そうだしねぇ。」

 

ベッドの傍らに立ち、ケットの上から股間の辺りを撫でる。

「ゾロに、触るな!」

「ふっ、医者が患者に触れないでどうすんだい。」

「今のは、そういうんじゃなかったろうが!!」

 

足元に倒れた状態ながら強気に吠えるサンジの背後に跪き、バイブの柄に手をかけると一気に引き抜く。

「ひぃっ---!」

「キャンキャンと煩いな。もう、自分の立場を忘れたのか?」

乱暴に最奥まで突っ込み、振動を最大に上げる。

「ぐぁっ!!・・・・・う、くぅ・・・・」

玉が連なった形状のバイブの先端は激しくうねり、手前のボールは前立腺の上で跳ねる。

二つの動きに翻弄され、耐えがたいサンジの先端はたらたらと滴を垂らしながら、震えるほど屹ち上がっていた。

それをピンと指で弾かれる。

「んっ」

痛いはずの行為まで脳に甘く響く。

「強情だな。おれにイカされたくないってことか?

 じゃ、イかないよう手伝ってあげよう。」

 

はりついたような酷薄な笑顔で、カテーテルを取り出すと、サンジの先端に埋め込んだ。

するすると挿入される長いチューブに、サンジの恐怖心は募る。

少々の痛みとともに湧き上がる、紛れもない快感。

帽子の下で光る冷たい眼が、体温の上がった身体を見下ろしている。

肉壁に阻まれては、軽く抜き、再度の挿入でさらに奥まで入り込む。

 

「さあ、栓ができた。安心だろう?物足りない後ろを満足してあげよう。

 すぐに戻るから、抜いたり、逃げたりするんじゃないよ?

 どうなるか、わかってるな!?」

こくこくと頷くサンジの後ろから出ているプラスチックを一瞥する。

「あぁっ!」

爪先で蹴り上げ、上がった嬌声を満足げに聞いて、ローが部屋から出て行った。

 

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