浴室から水音と楽しげな歌声が聞こえる。
久々に使った、業務用の大きなキッチンはやはり使いやすかった。
水も美味いし、火力もある。オーブンも大型。調味料は少し古くなっていたけれど、まだギリギリ。
秋島だけあって、実りも豊かだった。
ナミさんのリンゴはアップルパイにしよう。簡単な焼きリンゴもマダムに教えようか。
ロビンちゃんのキノコは3分の2は怪しいシロモノで、チョッパーの研究材料となったが。
チョッパーが蹄を駆使して集めてきた栗は大粒でホクホクで煮込みにすると良い味になった。
ゾロのウサギはソテーも、煮込みもたっぷり作れた。
ルフィのイノシシはしっかり血抜きしないとケモノ臭いが、明後日には食べられる。
ウソップのブドウも良い頃合いだし、銀杏は水に漬けた、明日はあれを剥いて干さなきゃな。
炒っただけでもツマミに良いし、茶わん蒸しにしてもいい。
ゾロが好みそうなメニューだな。
ゾロ、今日はえらく機嫌が良かったな。山で?
いや、その前からか。
レディたちと喋ってるときは、大概余計な茶々を入れてくるのに、今日はそれもなく。
まぁ、お代わりだ、なんだ、とタイミングよく邪魔はしてきたが、理不尽な雑言じゃなかった。
部屋はたくさんあるから、という夫人の言葉に甘えて、広々と一人一部屋を陣取った。
2階、3階に多数ある部屋はそれぞれ内装が異なるものの、全個室に浴室とトイレ完備の豪奢な作りだ。
浴室を出て、シンと静まり返る部屋を見渡す。
「なんだ。来てねーのか。」
一人呟いて、タバコに火をつける。首にかけたタオルで髪の水気を拭いながら深く吸い込む。
「どうすっかな。」
口に出しつつも、頬が緩む。もう腹は決まっている。
「しょうがねーな。マリモは。行ってやっか。」
コンコンとノックと同時にドアを開ける。
と、ゴージャスな部屋と不似合いな筋肉マリモが、不似合極まりない姿で転がっていた。
錘のつもりか、背中にローテーブルを乗せ、腕立て伏せをしている。
「おう。」
「まだ、鍛練してんのか。」
「もう少しな。」
一日中山を駆けずり回った日くらい、鍛練は減らしても良いんじゃないか?もう充分身体は酷使しただろう?融通の利かない男にため息を吐く。
「せっかく、おれが来てやってんのに。」
「ちょっと待ってろよ。」
「待てねーなー」
ゾロの脇にコロンと仰向けで転がると、頭が上下しているところに顔を差し入れる。
ニヤッと口端を歪めながら、ゾロが腕立て伏せを続ける。
「邪魔すんなよ。」言いながら、唇を重ねる。
離れていく口をサンジの舌が追う。
「邪魔?応援してんじゃん。」
離れる間もなく、次の唇が降ってくる。
数回繰り返し、ゾロの集中力が無くなっているのを見て、サンジが身体を起こす。
「一人で遊んで待っててやっから、てめぇは集中してサッサと終わらせろや。」
肩にひっかかっていたタオルをバサッと落とす。
シャツのボタンを3つほど開ける。片手を差し入れると胸元を撫で、ふぅ、とため息を漏らす。
スラックスの前立てを撫でても、まだ何の反応もしない。
ジッパーを降ろし、シャツを上げると、スラックスと同じ黒い下着が見える。
ほら、ゾロ。てめぇ実はおれの柄パン好きじゃねぇだろ?こういうのが良いんだよな?
反応してないモノは見えないように、ゾロが好む金の叢が覗けるほど下着をずらす。
ゾロの腕立て伏せはスローペースになっていて、意識のすべてがサンジに向かっている。
ストンとスラックスを落とす。同時にシャツを上げていた手も離し、下半身はスラッと伸びた脚だけが見える。
シャツのまだボタンをはめたままのあわせ目から手を差し込む。まだ兆しの見えない部分を無視してグッと手首まで足の間に挟み、ゆっくりと抜く。どこを触っているか、わかるだろう?
ゾロの眼がギラリと光る。
サンジはそれでも兆さない自身に少し苛立ち、シャツの中から黒い下着もストッと落とす。
「へ・・・くしょん!」
ブルッと身を震わせ、脱いだばかりの下着に手を伸ばす。
屈んだシャツの下からぷるんと覗いた白い尻に、ゾロがガバと立ち上がる。
「はは。遊び過ぎた。湯冷めしちまうよ。」
なんだか、どうせ立たないし、とサンジが服を着始めた。
勝ったから、いいや。
「おい!」
「あ?もういいや、先寝てるぜ。鍛練しちまえ。」
「もう、終わった。」
「うっそだろ~?」
「てめぇ!煽るだけ煽りやがって!」
「あれっくらいで、煽られてんじゃねぇよ、未熟者め。終わりにすんなら、汗流してこい。」
「さっき入った。」
「ありゃ、泥だらけだったから!それから、鍛練してたんだろ?」
「汗かくほど、してねぇ!」
「じゃぁ、鍛練足りてねーんじゃん!」
「あー!もう!うるせー!」
サンジの腰を掴み、クッションの効いたベッドへ二人そろってダイブした。