背後から響いたナミの叫び声を聞くや否や、階段を上がりかけていたサンジは飛び降り、ルフィに吹っ飛ばされたナミを抱き止めた・・・つもりだったが、僅かに間に合わず、階段とナミの間に身を滑り込ませるのが限界だった。
「いったぁ~、サンジくん、ありがとう。」
「どういたしまして。怪我はないかい?くぉら!クソゴム!!」
立ち上がろうとしたナミは、ふと触れたハーフパンツからでているサンジのすねを撫でる。
「ナ!ナナナ、ナミさん?」
「んー?」
「どうしたの?やっぱり、どっか痛い?」
「ううん」
さわさわと撫でられ、動けないサンジは唇を並々にしてプルプルと震えている。
「ナミ、さん。くすぐったい、です。」
「あ!ごめん、ごめん。あはは!男の人のすね毛って、もっと剛毛なのかと思ってたから、ふにゃふにゃで驚いて!つい!」
「ふにゃふにゃ・・・」
すね毛は大人の男の証、ダンディーだぜ!と思っていたサンジを打ちのめしたなんて露ほども気づかない女性陣。
ロビンまで手を生やしてさわさわと撫でまくる。
「あら、ほんと。私の方が濃いかも。」
「ロビンちゃんより・・・」
座り込んだまま自失しているサンジはそっちのけでナミが同意する。
「でしょ!?ムダ毛というより産毛よね!」
「・・・産毛・・・」
「剃ると濃くなるって言うわよね~」
「除毛テープってあるわよね」
「あれは痛いわよ~」
花咲く赤裸々ガールズトークに活路を見いだしたサンジは風呂場へ走った。
「てめぇ、なにやってんだ?」
チョッパーと連れ立って浴室のドアを開けたゾロの眼に飛び込んできたのは、浴槽に足をかけ、涙目で安全カミソリを握るサンジの姿。取り落とした風呂桶もそのままにゾロが声をかけた。
「うわぁ、サンジ。ツルンツルンだなぁ!」
「ツルンツ・・・見てろ!これが生え揃ったときにはゴワゴワのモシャモシャだぜ!」
「あぁ!それはただのウワサだ、ウソだぞ。」
「う・そ・・」
自然な毛先は段々細くなるのに、剃られたら断面が毛先になるから濃く見えるだの、人種や毛質の違いだから濃くするっていうのは難しいだの、チョッパーの説明はサンジの耳を素通りした。
だが、トドメを刺したのは間違いなく、ゾロだった。
「体質か。てめぇ、脇でさえ、ちょろちょろっと2、3本生えてるだけだしな。」